まねき屋の張子blog

まねき屋の張子作業に関するblogです
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馬の修理 その2

と言う訳で、とにかくブツは預かった。


江戸時代作の張子に触れられる、
と言う好奇心に抗う事が出来ずに
思わず引き受けてしまったのだが
さて、何処から手を付けた物か。

まずは胴体の補修から始めるとするか。
とにかく全体を丈夫にしないとなぁ。
内側に紙を貼って補強する事にしよう。
だが、それをする為には作業用の穴を開ける必要がある。
と言って、好きに穴を開けられる訳がない。
首と足の接着面だった部分を広げるしかない。



と言って、切って開けてしまうと後々問題になりそうだ。
なので水で湿らせてふやかしてから広げる事にした。


広げてみると中に浮いている紙が。


経年劣化で糊の接着力が落ちたにしては
剥がれ方、浮き方が尋常じゃないので
どうやら、元々紙がちゃんと貼り合わされていなかった模様。
探ってみると、剥がれの部分は奥にも続いていて結構大きい様子。
張子は、紙がきちんと貼り合わされていないと強度が出ない。
この馬が押しつぶされてしまったのは
そこにも一因があるのかも知れないなぁ。

まず、今後の作業を想定し、道具を作成。
ダイソーで売ってるバーベキュー用の竹串を削り
薄く長いヘラと、茶杓の様なヘラを作った。



広範囲を浮き紙を接着させるには
スポイトで糊を流し込むしか無いだろう。
荒療治になるが、仕方無い。

でんぷん糊を少し水で溶き、
ノズル部分が細くて長いスポイトで吸う。


それを紙の浮いた隙間に流し込む。


ノズルを押し込み、可能な限り奥へ流し込む。



それを茶杓の様なヘラで押さえて行く。




この作業を数日掛け、浮き紙部分の接着には何とか成功。
これでやっと本来の補強作業が出来る。

所で、胴体の中を見ると結構凸凹だ。
これは雌型で生地を作った張子の様子。
張子の作成方法には、型の上に紙を貼る雄型と
型の内側に紙を貼る雌型の2種類がある。

雄型は当方を含め、多くの人がやっている技法。
型の上に紙を貼って行く為に尖った部分の再現や
エッジの細かい表現には向いておらず
紙を貼り重ねた時の厚みのムラが表に出てしまうが
だからこその張り子独特の柔らかなフォルムが出来る。
また、紙を貼る作業時間が
雌型に比べると短くて済むので量産に向いている。

雌型は型の内側に紙を貼って行く為に
エッジを活かした細かい表現や、
貼り重ねた紙の厚みによるムラが表に出ない為に
表面をなだらかに仕上げたい物や
大きさを正確に揃えた物を作るのに向いているが、
雄型に比べて紙を貼る手間が掛かるので
伝統張子では殆ど使われていない技法だ。

ただ、群馬県の高崎達磨の様な現代の工場での量産張子では
雌型に液状パルプを流し込んで真空成形をする、と言う
新たな雌型技法が採用されている。
はっきり言って、それは「張子」とは言えない、と思うのだが
「張子」その物が時代遅れの産業技術なのだから
仕方無いだろうなぁ・・・・・・

で、この馬は雌型で生地が作られている様だ。
足・首・胴と部品を別々に作り
後で正確に組み合わせなければならないので
各部品の誤差が出ない様にする為に雌型が採用されたのだろう。
量産品とは言え、高級な品なので
その様な丁寧な作業方法が採られたのだと思われる。

表面の毛の植えてある紙を剥ぐと大きな亀裂が。





内部を見ても亀裂が全身に渡っている。


これは型の継ぎ目だ。
恐らく、胴体を真っ二つに切った状態の雌型があり
半身ずつ生地を作り、それを突き合わせているのだ。

ただ、伝統張子全般に言えるのだが
半身ずつを接合させている、
その合わせ目には接着剤が使われていない。
外側に紙を貼る事だけでくっ付けているのだ。
それでは強度が出ないと思うのだが
それはあまり気にしない様なのだ。
そしてこの馬でもそれは当てはまっている。

元々張子は紙で作られているので
強度に関しては鷹揚と言うか
それ程考えられていない様だ。
実は子供のおもちゃとして製造された張子玩具は
「成長の証」「元気な証」として
子供にそれが壊される事を周りの大人達は喜んだ、と言う話だ。
所詮、紙で作られた物だから
絶対的な強度は必要とされていなかったのだろう。
江戸〜明治時代、張子玩具は
全国各地で大量に生産されていたのだが
当時の作品が現在殆ど残されていないのは、
それが理由の一つでもある様だ。

当時、安くはなかった筈のこの馬でも
その思想は変わらなかったのかも知れない。
この馬が押し潰されてしまったのも
それが遠因にあるのでは無いだろうか。
因みに、当まねき屋の張子は
合わせ目にもきちんと接着剤を使っているので
そうぞご安心下さい(と自慢w)。


さて、全体を補強するには
この合わせ目も対処しなければならない。
なので、木工用ボンドで接着する事に。




伝統工芸品の補修であるからには本来接着剤として
ニカワやでんぷん糊を使うべきなのかも知れない。
数十年後の再修理があった際にその方が作業もしやすい筈だ。
当方達が分解に苦労した様な事は避けるべきかも知れない。
だが、当方は普段使い慣れた素材を使う事を優先させた。
将来あるかどうか判らない、未来の補修の事を考えるより
とにかく今、この馬を徹底的に頑丈に作りたかったのだ。
今後、何があってもそう簡単に潰れたり
分解する事が無いくらいに仕上げたいのだ。

合わせ目が接着出来た所で
平筆で糊を塗り、毛の植えてある紙を貼って行く。




そして内側からの補強作業。
平筆を内部に差し入れ、糊を塗る。



その平筆で、小さく切った和紙を置いて行く。
更に糊を上から塗り、撫で付けて形を馴染ませる。

それを胴体の内側全体に何度も何度も繰り返す。

そして内貼りが完成。




少しずつ貼っては乾かし貼っては乾かし、を
繰り返さなければならなかった為に
全体を貼り終える迄に丸一週間掛かってしまった。
だが、お蔭でかなり丈夫に出来た。
取り敢えず胴体の補修はこれで良いかな。
この方法で今後の作業も何とかなりそうだ。
(続く)

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この記事に対するコメント

大変な作業ですね。
早く早くみたい。
次をアップされたし!
ポコマム | 2014/06/16 9:46 PM

>>ポコマムさん
何分、大作業でしたので中々書き切れません……

因みに、あと3回は続く予定です。
気長にお待ち頂けましたら幸いです(^-^)
まねき屋 | 2014/07/05 1:44 PM
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